あなたの肝臓、元気ですか?~肝臓は体の中の化学工場
年齢とともに気を付けなければならない臓器のひとつ「肝臓」。
人体のどの臓器も大切な役割をになっていますが、「肝臓」は人体の中の化学工場と言われるくらい重要な臓器です。
特に、中高年の男性では健康診断の血液検査で肝機能の数値がひっかかることが多いです。飲酒を多くされる方は耳の痛い話かもしれませんが、健康寿命を伸ばすためには肝臓を労わってあげることが重要になります。
今回は、中高年の男性が特に気を付けなければならない臓器である「肝臓」について述べます。
肝臓は沈黙の臓器
肝臓は食物の消化吸収を健全に行うための必要不可欠な臓器です。
その肝臓には、さまざまな病気がありますが、症状がほとんど現れないため、病気があっても気が付いていない人が多くいます。肝臓の機能を知って、病気になる前に血液検査で数値を定期的にチェックするなどの病気の早期発見のための健康管理がとても大切になります。
肝臓の重要な働き
肝臓には様々な役割があります。その代表的な役割4つを述べます。
1.解毒作用
お酒を飲む方はご存じかと思いますが、お酒を飲んだ時にアルコールを分解して尿中に排出してくれるのが肝臓です。
2.糖質の貯蔵
体のエネルギーを作るのに欠かせない「糖質」、ブドウ糖(グルコース)は、すぐに使わないブドウ糖をグリコーゲンという成分に加工して肝臓に蓄えられています。体内でエネルギーが必要になると、グリコーゲンをブドウ糖に変換して血液中に戻します。
炭水化物などの食べ過ぎで糖質を多く摂りすぎると、余った糖質は肝臓に貯蔵され、脂肪となって蓄積されます。肝細胞の約3割以上に脂肪がたまると脂肪肝と診断されます。
脂肪肝と診断されたら、放置せずに治療を受けることが大切です。
3.消化の手助け
脂肪の吸収は小腸で行われますが、その吸収には胆汁が不可欠になります。胆汁を作るのは肝臓で、胆嚢は胆汁を濃縮する役割を持ちます。
4.血液の貯蔵(体温の調整)
肝臓は血液を多く蓄えており、体の他の部分に血液が必要になったときに、血液を供給します。血液が供給によって体温が調整されます。普段、我々の体内にある血液の4分の1は肝臓にあります。
肝機能を表す数値
■γ-GTP、AST/ALT
肝臓に障害がおこって肝細胞が壊れると、本来、肝臓中に存在する酵素であるγ-GTP、AST、ALTの血中濃度が上がります。健康診断の血液検査では、下記の数値を注意して見てください。
肝障害がある方は、ASTよりもALT値が高くなります。ASTは骨格筋や心筋、赤血球にも存在するが、ALTは主に肝臓に存在しているため、ALT値の方が肝障害の判断にはより正確になります。
① γ-GTP
γ-GTPはたんぱく質を分解する酵素で、肝臓や胆嚢に障害があると血液中に流れ出てきます。
γ-GTPはアルコールにも過敏に反応するため、肝障害がなくても普段から良くお酒を飲む人は一時的に数値が高めに出ます。一定期間、禁酒を行ってγ-GTPの値が下がれば肝障害の疑いが少ないという判断になります。禁酒を行っても数値が下がらない場合は肝障害を起こしている可能性が高いということになります。
・男性: 75以下
・女性: 45以下
高値で、アルコール性肝炎、薬剤性肝炎が疑われます。
② AST/ALT
細かい数値は別途調べるとして、概ね下記の数値で覚えておくと良いです。
・AST: 概ね50以下
・ALT: 概ね50以下
高値で、急性肝炎、心筋梗塞、肝硬変、肝癌、脂肪肝などの指標になります。
■再検査
上記に挙げた数値が高い場合、二次検査を受けるのが良いでしょう。特に下記に当てはまる方は、要注意です。
・お酒を毎日のように飲んでいる
・年々、体重が増加している。
・油物をあまり食べられなくなった
・尿の色が濃くなった
二次検査は、血液検査と超音波検査が一般的です。
① 血液検査: 肝炎ウイルス検査、腫瘍マーカー検査
② 超音波検査: 脂肪肝など
年に1度は健康診断を受けて、肝臓の数値(γ-GTP、AST/ALT)に異常がないかをチェックするようにしてください。
脂肪肝
脂肪肝は中高年の男性に特に多い症状です。脂肪肝は、
・食べ過ぎ・飲みすぎ・運動不足
が主な原因です。
基本的な考え方は、摂取したエネルギーが消費するエネルギーより上回ると、余ったエネルギーは肝臓に運ばれて中性脂肪となります。中性脂肪は肝臓で処理(代謝)されますが、処理しきれなかった中性脂肪がどんどん肝臓に溜まっていきます。
肝細胞の3分の1程度以上に脂肪が溜まったら脂肪肝と診断されます。
■食べ過ぎ
特に、ご飯や麺類の炭水化物(糖質)を多く取りすぎると、グルコース(ブドウ糖)が余って、グリコーゲンという形に変えて肝臓に貯蔵されます。このグリコーゲンがしばらく使われないと脂肪に変わり、そのまま肝臓に溜まってしまいます。
■飲みすぎ
お酒を飲みすぎると、肝臓はアルコールの処理を優先させるため、食べ物から採ったブドウ糖の加工が後回しなって脂肪として蓄えられてしまいます。
脂肪肝の予防
脂肪肝の予防は、生活習慣を変えることです。
脂肪肝になる原因は、
・食べすぎ、飲みすぎ
・運動不足
からくる肥満です。
これらの生活習慣を変えて頂くのが良いでしょう。具体的には、
・適度な運動 → 毎朝のラジオ体操を続ける
・休肝日 → 週に1日、できれば2日
・体重を減らす → 1カ月に体重を1キロ、できれば2キロ
まずは、できることから少しづつ生活習慣を変えていくことが肝臓をよい状態に保つのに大切です。
心当たりのある方は、生活習慣を振り返り、改善してみてください。