頚椎症・頚椎ヘルニアで痛みやしびれが起こる仕組み

頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアでは、首だけでなく、肩甲骨周辺や腕、手指に痛みやしびれが現れることがあります。
一般的には「首の神経が圧迫されることで痛みやしびれが出る」と説明されますが、実際にはもう少し複雑な仕組みが関係しています。
神経が圧迫されることで、神経内部の血流が悪くなったり、炎症が起こったり、神経の電気信号に異常が生じたりすることがあるのです。
今回は、頚椎症・頚椎ヘルニアによって痛みやしびれが起こる仕組みを、できるだけわかりやすく解説します。
1.神経が圧迫されると何が起こるのか?
首の骨である頚椎からは、左右に神経が伸びています。この神経の根元部分を「神経根(しんけいこん)」といいます。
頚椎症では骨の変形や骨棘(こつきょく)などによって、頚椎ヘルニアでは飛び出した椎間板などによって、神経根が圧迫されることがあります。
神経根が圧迫されると、主に次のような変化が起こることがあります。
- 血流障害:神経内部の細い血管が圧迫され、血液の循環が悪くなる。
- 浮腫(むくみ):血液循環の障害などによって、神経内部や周囲にむくみが生じる。
- 炎症:神経根の周囲で炎症反応が起こり、神経が刺激に敏感になる。
- 神経伝導の異常:神経の電気信号が正常に伝わらなくなる。
ただし、神経が圧迫されていても、必ず痛みやしびれが出るわけではありません。
実際に、MRI検査で神経の圧迫が確認されても、症状がほとんどない方もいます。
つまり、神経の圧迫の程度だけで、痛みやしびれの強さが決まるわけではないのです。
2.炎症によって神経が過敏になる
神経根が圧迫されたり、椎間板ヘルニアの成分が神経の周囲に接触したりすると、炎症反応が起こることがあります。
痛みや炎症には、次のような物質が関係しています。
- ブラジキニン:痛みを伝える神経を興奮させ、刺激に敏感にする。
- プロスタグランジン:痛みを感じる閾値を下げ、通常より痛みを感じやすくする。
- ヒスタミン:血管や感覚神経に作用し、炎症反応に関与する。
- TNF-α・IL-1β:炎症を促進し、神経の過敏性を高める。
これらは炎症性メディエーターと呼ばれ、神経の働きに影響を与えます。
特に頚椎ヘルニアでは、神経への機械的な圧迫だけでなく、こうした化学的な炎症も痛みの発生に関係すると考えられています。
炎症によって神経が刺激に敏感になることを「感作(かんさ)」といいます。
このため、MRIでは神経の圧迫が比較的軽く見えても、強い痛みが現れる場合があるのです。
3.神経の電気信号に異常が起こる
神経は、電気信号によって身体の感覚や運動の情報を伝えています。
炎症や圧迫によって神経の働きが障害されると、この電気信号に異常が生じることがあります。
代表的なのが、次の2つです。
① 異常な電気信号が発生する
通常、感覚神経は身体に刺激が加わることで電気信号を発生させます。
しかし、炎症や神経の障害によって、刺激が加わっていないのに神経が異常な電気信号を発生させることがあります。
これを「異所性発火(いしょせいはっか)」といいます。
この異常な信号が脳に伝わることで、ビリビリするしびれや、電気が走るような痛みなどが現れることがあります。
② 電気信号が正常に伝わらなくなる
一方、神経への圧迫が強かったり、障害が進んだりすると、電気信号が正常に伝わらなくなることがあります。
この場合には、
- 皮膚の感覚が鈍くなる
- 指先の感覚がわかりにくくなる
- 腕や手に力が入りにくくなる
といった症状が現れることがあります。
つまり、同じ「しびれ」という言葉でも、神経が異常に興奮している場合と、神経の信号がうまく伝わっていない場合があるのです。
4.なぜ首の神経が原因なのに、腕や指が痛むのか?
頚椎から出る神経は、肩や腕、手指などにつながっています。
そのため、首の神経根で異常な電気信号が発生すると、脳がその信号を腕や手指から伝わってきたものとして認識することがあります。
例えば、頚椎の神経根に障害が生じると、肩甲骨周辺から腕、手指にかけて痛みやしびれが現れることがあります。
このように、実際には腕や手指の組織に損傷がなくても、首の神経の異常によって痛みやしびれを感じる場合があるのです。
ただし、症状が現れる場所には個人差があり、必ずしも特定の神経の分布と一致するわけではありません。
5.神経の圧迫が強いほど、痛みも強くなるのか?
必ずしもそうではありません。
頚椎症・頚椎ヘルニアの痛みには、神経の圧迫だけでなく、炎症の程度や神経の過敏性、神経の伝導障害などが関係しています。
そのため、
- MRIでは軽度の変化なのに、非常に強い痛みがある。
- 神経の圧迫が確認されても、痛みはそれほど強くない。
- 痛みは軽くなったのに、しびれが残っている。
といったことが起こります。
また、痛みが強いことと、神経の損傷が重いことは必ずしも同じではありません。
痛みが比較的軽くても、筋力低下などの神経障害が進行している場合があるため注意が必要です。
6.指圧によって痛みが軽減するのはなぜ?
指圧などの徒手療法によって痛みが軽減する場合、いくつかの仕組みが考えられます。
私たちの身体には、痛みの信号を調節する仕組みが備わっています。
例えば、皮膚や筋肉への適切な触覚・圧覚刺激は、脊髄や脳における痛みの伝達や処理に影響することがあります。
また、施術によって筋肉の緊張や姿勢、身体の動かし方が変化することで、痛みに関係する機械的な負担が変わる可能性もあります。
ただし、指圧によって神経根の圧迫そのものが解除されたり、炎症性物質が直接取り除かれたりすることが証明されているわけではありません。
痛みが軽減することと、神経の構造的な障害が改善することは、区別して考える必要があります。
まとめ
頚椎症・頚椎ヘルニアによる痛みやしびれは、単に神経が圧迫されるだけで起こるものではありません。
主に次の3つの仕組みが関係しています。
- 機械的な圧迫:神経根への圧迫によって、血流障害や浮腫、神経伝導の異常が起こる。
- 炎症による神経の過敏化:炎症性物質の作用によって、神経が刺激に敏感になる。
- 神経の電気信号の異常:異常な電気信号の発生や伝導障害によって、痛み・しびれ・筋力低下などが現れる。
これらの仕組みが複雑に関係しているため、MRI画像で確認できる神経の圧迫の程度と、実際の症状の強さが必ずしも一致しないのです。
頚椎症・頚椎ヘルニアの症状を理解するためには、画像検査の結果だけでなく、痛みやしびれの現れ方、感覚や筋力の状態などを総合的に評価することが大切です。
なお、腕や手の筋力低下が進行する場合や、手指の細かい動作が難しくなる、歩きにくくなるといった症状がある場合には、脊髄の障害なども考えられるため、速やかに医療機関での評価が必要です。
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